"OUR CO-BLIND - An Ethnography of Care among Visually Impaired Communities in Baguio" は、半年間の人類学的フィールドワークに基づいて制作された民族誌映画(Ethnographic Film)である。
オーフス大学(Aarhus University, Denmark)の映像人類学修士課程における研究プロジェクトの成果として制作された本作品は、北フィリピン・ベンゲット州をフィールドに、高原都市であるバギオ(Baguio City)およびその周辺に生活する視覚障害当事者たちとともに、彼らが形成する自律的なコミュニティと社会運動に焦点を当てる。当事者たちのコミュニティ内部でのケア実践に関するエスノグラフィを入り口に、「ケアを提供する者」「ケアを受ける者」という二項対立的な役割認識を超えた、状況に応じた突発的で生成的なケア関係を描く。さらに、障害を持つ当事者たちがともに集まり生活を共有することで獲得する「より大きな声 "bigger voices"」が、いかにして北フィリピンの社会に聞かれることで社会運動につながるかを捉えている。そこでは、感情的・人間的な印象ととも語られがちな「ケア」が、極めてロジカルで戦略的な行為であるというリアリティが立ち上がってくる。
本作品は米国 ABQ Indie Film Festival 2024 およびスペイン FICIMAD で受賞・上映され、日本・デンマーク・フィリピンでは映像・写真作品の展示を実施。2024年5月にはフィリピン大学バギオキャンパスで公開上映と対談セッションが実施された。

Members of Blessed Community of Persons with Disabilities (interlocutors for the research and filmmaking)

このリサーチプロジェクトが協働の対象としたのは、Blessed Community of Persons with Disability (BCPD) という、視覚障害当事者たちによって自ら形成された自助コミュニティである。彼らはブラインドマッサージと呼ばれる当事者たちによるマッサージ活動を主な仕事とし、並行して楽器演奏や農業、手芸などを通して生計を立てている。
行政からの障害者支援が乏しいことを背景に、彼らの生活水準は非常に低い。障害を持つ者が個人として生きていくことは困難であり、多くの当事者たちは自助コミュニティで共にくらし、多様な活動を通して収入を得ている。38分間の映像は、そのコミュニティの当事者の間で生成されるケアの実践を通して、明確な役割を前提に語ることのできない曖昧なケア関係と、その活動の社会運動としての側面について描いていく。
Title “Our Co-Blind - An Ethnography of Care among Visually Impaired Communities in Baguio”
Year of Production 2023
Country of Production Denmark
Duration 38min
Interlocutors Alfredo Esquillo, Shirley Esquillo, Domingo Regados, Junifer Ap-Ap, Jennifer Maysa 
Director / Editor Masato Ushimaru (Aarhus University, MSc in Visual Anthropology)
Translator Darleen Vee Bialno

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